国家公務員は、政策立案など国の中枢に関わる仕事です。
責任の重い仕事も多く、本省勤務職員の激務ぶりは広く知られています。
一方で、皇居の護衛官や裁判官、税務署職員、生活支援員など、国家公務員には多種多様な職種があるのも特徴です。
国家公務員を目指す方にとって、職種や年齢ごとにどの程度年収の差があるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、気になる国家公務員の年収の目安を職種別・年齢別で比較紹介します。さらに、年収が高い職種・低い職種も紹介していますので、将来的に志望する職種を判断する際の材料としてぜひ参考にしてください。
- この記事でわかること
- 国家公務員の職種ごとの給与・年収
- 国家公務員の年齢ごとの給与・年収の目安
- 総合職・一般職の年収の違い
- 国家公務員の中で年収が高い・低い職種
公務員の仕事の種類はいくつある?地方・国家公務員の職種一覧・仕事内容・それぞれの適性
国家公務員の職種ごとの給与・年収を比較
ここからは、気になる国家公務員の年収についてみていきましょう。
国家公務員の年収は、人事院が毎年実施する「人事院勧告」で民間の給与実態等との均衡を考慮した水準が示されます。
これをもとに政府が決定したのち、国会で「一般職の職員の給与に関する法律(給与法)」の改正案が議決されて決定する仕組みです。
なお、令和5年度に国家公務員約59.0万人のうち人事院勧告の対象となったのは、給与法が適用される一般職の国家公務員約28.2万人でした。
そのほかの職種は、検察官俸給法や特別職給与法、裁判官報酬法など、それぞれに適用される給与の法律が異なるのも国家公務員の特徴です。
国家公務員(一般職・総合職)の給与・年収の平均
国家公務員の中で、一般職の給与・年収の平均は約660万円でした。
平均月給は、国家公務員の一般職と総合職が該当する行政職俸給表(一)によると約40万円で、夏・冬のボーナスにあたる期末手当・勤勉手当は約67万円が平均です。
参照:令和5年12月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給|内閣官房内閣人事局
役職や勤続年数、手当の有無によって差があるため、年収の平均と月給+ボーナス2回の合計金額に差が出ています。
国家公務員の職種ごとの給与・年収一覧表
国家公務員の一般職・総合職以外の職種にあたる専門職の給与・年収の平均および平均年齢・平均経験年数は以下の通りです。
俸給表 | 職員数 | 平均年齢 | 平均経験年数 | 平均給与月額 | 平均年収額 |
---|---|---|---|---|---|
全俸給表 | 252,790 | 42.3 | 20.4 | 412,747 | 約660万円 |
行政職俸給表(一) | 139,522 | 42.4 | 20.3 | 404,015 | 約600万円 |
行政職俸給表(二) | 1,941 | 51.2 | 29.4 | 329,178 | 約500万円 |
専門行政職俸給表 | 7,896 | 42.6 | 20.3 | 446,205 | 約700万円 |
税務職俸給表 | 51,474 | 42.0 | 20.6 | 428,330 | 約700万円 |
公安職俸給表(一) | 21,965 | 41.6 | 20.3 | 382,749 | 約600万円 |
公安職俸給表(二) | 22,987 | 40.1 | 18.7 | 409,111 | 約650万円 |
海事職俸給表(一) | 202 | 42.4 | 21.2 | 453,720 | 約750万円 |
海事職俸給表(二) | 363 | 41.0 | 22.3 | 371,628 | 約600万円 |
教育職俸給表(一) | 93 | 46.2 | 21.8 | 480,515 | 約800万円 |
教育職俸給表(二) | 66 | 49.3 | 25.3 | 456,832 | 約750万円 |
研究職俸給表 | 1,381 | 46.6 | 22.9 | 562,418 | 約850万円 |
医療職俸給表(一) | 583 | 53.5 | 26.6 | 839,896 | 約1,200万円 |
医療職俸給表(二) | 485 | 46.5 | 20.9 | 357,899 | 約550万円 |
医療職俸給表(三) | 1,825 | 47.8 | 22.4 | 360,574 | 約550万円 |
福祉職俸給表 | 246 | 44.2 | 20.2 | 387,943 | 約650万円 |
専門スタッフ職俸給表 | 164 | 56.0 | 32.7 | 601,518 | 約900万円 |
指定職俸給表 | 957 | 57.0 | 33.5 | 1,029,685 | 約1,600万円 |
※平均年収額は月給×12か月+期末手当・勤勉手当(給与4.5か月分)で算出
職員数は、行政職俸給表(一)に該当する一般職・総合職がもっとも多く、給与も国家公務員全体のうち平均的な金額であることが分かります。
そのほかの専門職が該当する給与の項目は、以下の通りです。
- 専門行政職俸給表:航空管制官など
- 税務職俸給表:税務署職員など
- 公安職俸給表:刑務官、海上保安官など
- 海事職俸給表:船員、甲板長、機関員など
- 教育職俸給表:気象大学校の教授、准教授など
- 研究職俸給表:研究所の研究員など
- 医療職俸給表:医師、歯科医師、看護師、薬剤師など
- 福祉職俸給表:障害者支援施設の生活支援員など
- 専門スタッフ職俸給表:情報分析官、国際交渉官など
- 指定職俸給表:事務次官、局長など
専門職は、国家公務員試験だけでなく、それぞれの専門分野に関する資格を有している人がほとんどです。
例えば、気象予報士や医師、看護師、海技士などが挙げられます。
また、各棒給表に(一)や(二)があるのは職種の違いによるものです。例えば、海自職の場合(二)には海上自衛官、行政職(二)は技能・労務職員などが該当します。
年齢別の年収比較一覧表
国家公務員の年収については給料の他賞与などの各種手当などがあり、さらに採用区分・扶養家族・役職の有無などにより個人差があります。
また、国家公務員は、年功賃金(年齢・勤続年数が高い・長い人ほど給与が増えていく)のため、年齢階層によって年収が異なるのも特徴です。
行政職俸給表が適用される職員を対象として以下の表に参考程度のデータをまとめました。
年齢階層 | 平均年収の目安 |
---|---|
~32歳未満 | 約380万円 |
32歳以上~40歳未満 | 約620万円 |
40歳以上~52歳未満 | 約740万円 |
52歳以上 | 約720万円 |
※算出方法:年齢階層別平均給与×12+年齢階層別平均給与×4.5ヶ月(ボーナス)
国家公務員の中でも、32歳未満と52歳以上では2倍近い年収の差がありました。そのため、国家公務員の平均的な年収(660万円)に到達するには、勤続20年前後必要になることがわかります。
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国家公務員のボーナス・各種手当・退職金の目安
国家公務員の年収には、ボーナス(期末・勤勉手当)や各種手当も含まれています。
また、民間企業と同様に退職時には退職金が支給されるのも特徴です。
ここからは、国家公務員のボーナス・各種手当・退職金の目安を紹介します。
国家公務員のボーナス(期末・勤勉手当)
内閣官房内閣人事局によると、令和5年12月期に支給された、国家公務員(一般職)のボーナスにあたる期末・勤勉手当の平均額は約674,300円でした。
令和4年12月期と比べて約2万円ほどの増額となっています。
参照:令和5年12月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給|内閣官房内閣人事局
ボーナスの支給月は、2.26か月分であり、年間に換算すると約5か月分相当の金額が支給されている計算です。
国家公務員の給与・ボーナスは、国家公務員の給与を増額する改正給与法によって定められており、毎年民間の給与状況などを鑑みて決定されています。
国家公務員の各種手当
国家公務員は、民間企業と比べて各種手当が充実しているのも特徴です。
職種や役職、勤務先などによって対象となる手当に差はありますが、国家公務員は以下のような手当を受け取ることができます。
地域手当 | 民間の賃金が高い地域の職員に支給される手当 |
---|---|
広域異動手当 | 60km以上の広域異動となった職員に3年間支給される手当 |
通勤手当 | 通勤時の交通費に対して支給される手当 |
単身赴任手当 | 配偶者と離れて単身赴任する職員に支給される手当 |
扶養手当 | 扶養する家族(配偶者・子・父母)がいる場合に支給される手当 |
住居手当 | 借家・借間に住む職員に支給される手当 |
寒冷地手当 | 冬季に特別な防寒対策が必要な地域に勤務する職員に支給される手当 |
特殊勤務手当 | 離島などの特殊勤務地に配属された職員に支給される手当 |
夜勤手当 | 深夜帯(午後10時から翌午前5時)に勤務した職員に支給される手当 |
上記はあくまで一例ですが、状況に応じて複数の手当を受け取ることが可能です。
各種手当で支給される金額も、勤務地や職員の状況(単身赴任、借家など)によって変動します。
国家公務員の退職金
令和4年度の国家公務員の退職金の平均金額は、約1,100万円でした。常勤職員が定年退職まで勤め上げた場合の平均は約2,100万円ですが、自己都合退職の場合は約270万円と大幅に減額されます。
この金額はあくまで目安であり、号棒(勤続年数)や級(役職)によって大きく変動するのも特徴です。
そのため、入職時期が異なる場合や級に差がある場合は、退職するタイミングが同じでも退職金の金額に差が出ると考えておきましょう。
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国家公務員総合職と一般職の昇給における違い
では、総合職と一般職で年収にどのような違いがあるのかみていきましょう。
採用された当初は同じ大卒程度の採用ならばほぼ変わりませんが、総合職と一般職では出世のスピードが違うためいずれ大きく差がつきます。
総合職で採用され、本省の事務次官や局長など民間企業の役員に当たるポジションになると、年収は1,600万円以上になるのも特徴です。
ここからは、総合職・一般職それぞれの昇任と収入のモデルケースについて違いをみていきましょう。
総合職の昇任と年収のモデルケース
総合職で採用されると、課長補佐から課長級まで同期とほとんど差がつくことなく昇進していきます。
【採用4年目】本府省庁の係長
本府省の係長に昇進し、年収は500万円程度です。
許認可業務につく場合もあれば、政策・法案の立案に従事することもあります。
【採用7年~11年目】本府省庁の課長補佐
課長補佐に昇進し、年収は800万円前後です。
国会議員への質問取りや大臣の答弁の原稿作成、政策・法案・予算案作成に従事します。
【採用17年目】企画官や室長
企画官級に昇進し、年収は1,000万円前後です。
キャリア組はここまではほぼ横並びですが、ここから課長級に上がる人と外部の団体へ出向する方が出てきます。
【採用22年~23年目】本府省庁の課長や参事官
本府省庁の課長級に昇進すると、年収は1,300万円前後になります。
このクラスになると所管業界への影響力が強くなり、仕事の魅力と醍醐味を味わえます。
【採用29年~30年目】審議官
本省の審議官級に昇進し、年収は1,500万円~1,800万円です。
審議官になると国家公務員の「指定職」といった役員の立場になり、専用の執務室・秘書・公用車が与えられます。
審議官の中からさらに出世競争に勝ち抜いた人が局長や事務次官に昇進していくため、年収に差が出る年代です。
事務次官になると、年収は2,300万円以上になります。
一般職の昇任と年収のモデルケース
一般職は中堅幹部候補として期待されており、本人の勤務成績や採用された省庁によっても昇任に違いが出てきます。
【20代後半】本府省庁の主任級or出先機関の係長へ昇進
この段階で本府省庁の主任もしくは地方の出先機関で係長に昇進する人が出てきます。
年収は400万円前後ですが、業務量によっては超過勤務手当が多くなり、500~600万円を超える人がいるのもこの年代です。
【30代半ば】 本府省庁の係長かor出先機関の課長補佐へ昇進
本府省の係長もしくは出先機関の課長補佐級に昇進し、年収は500万円前後です。
【40代後半】本府省庁の課長補佐or出先機関の課長へ昇進
40代後半に昇進し以後異動を繰り返し退官を迎える方が多く、年収は800万円前後です。
実務のプロとして裁量が大きく、キャリア組より発言権がある職員も少なくありません。
【50代中盤】本府省庁の室長や出先機関の長へ昇進
一部の職員は本府省庁の室長級や出先機関の長へ昇進し、年収900~1,000万円前後です。
以上のことから国家公務員の総合職と一般職の違いをまとめると以下のようになります。
- 採用時はそれほど差がつかない
- 昇進のスピードはかなり違う
- 40代になると年収で200万円以上差がつく
- 50代になると年収で500~1,000万円ほどの差がつく
国家公務員で年収が最も高い職種・最も低い職種
国家公務員で年収が高い職種は「事務次官・局長」
国家公務員の中で、もっとも年収が高い職種は事務次官・局長です。
そのほか、令和5年度の平均年収が900万円以上となったのは、以下の職種でした。
・医師・歯科医師:約1,200万円(平均年齢56歳)
・情報分析官・国際交渉官:約900万円(平均年齢53.5歳)
国家公務員で年収が低い職種は「船員・技能労務職員」
国家公務員の中で、年収の平均が低い職種は「船員・技能労務職員」でした。
また、令和5年度の国家公務員の平均年収が600万円よりも低くなったのは以下の職種です。
・看護師:約550万円(平均年齢46.5歳)
・技能・労務職員:約500万円(平均年齢51.2歳)
・刑務官:約600万円(平均年齢41.6歳)
これらの職種は、国家公務員の平均年収にあたる660万円よりも低い年収でした。
しかし、年収が高い職種の平均年齢よりも全体の平均年齢が若いことから、年齢層が厚い職種であることがわかります。あくまで平均値であり、キャリアアップ次第で年収は高くなっていくでしょう。
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国家公務員の年収は職種や年齢で大きな差がある
今回は、国家公務員の平均年収を職種別・年齢別で紹介しました。
国家公務員には多種多様な職種がありますが、キャリア組とも呼ばれる総合職や一般職のほか、専門職もそれぞれの職種ごとに給与体系が異なります。
国家公務員はどの職種であっても、国益に寄与する大きなやりがいが感じられる魅力的な仕事です。
今回紹介したのはあくまで平均年収であり、キャリアアップの速度や配属先などによっても大幅に異なります。
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