テレビドラマでは、弁護士が襟元に弁護士バッジを付けている姿を見かけます。実際には、バッジを服に付けることと、職務中に携帯することは区別されています。
それでは、弁護士バッジにはどのような意味や役割があるのでしょうか?
また、インターネット上で「レプリカ」として販売されているものを、購入したり身に付けたりする場合には、どのような点に注意が必要なのでしょうか。
この記事では、弁護士バッジの意味や取扱い、使用する場面、色や素材に関する特徴を紹介します。あわせて、弁護士を名乗る人物の登録情報を確認する方法も解説します。
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弁護士バッジ「弁護士記章」とは?
弁護士バッジの正式名称は「弁護士記章」です。形状や制式、交付・返還などの取扱いは、日本弁護士連合会(日弁連)の「弁護士記章規則」に定められています。
記章には弁護士の登録番号が刻まれ、職務上の身分や登録番号の確認に使われます。
ただし、バッジを持っていること自体によって、弁護士の資格や権限が与えられるわけではありません。弁護士として活動するための登録と、記章の交付は分けて理解する必要があります。
弁護士バッジは授与ではなく貸与される
弁護士記章規則では、日弁連が所有する弁護士記章を、弁護士に貸与すると定められています。
個人が自由に処分できる所有物として、記念品のようにもらえるものではありません。
弁護士名簿の登録取消しや業務停止の懲戒処分など、規則に定める場合には返還が必要です。インターネットオークションなどで、自分の所有物として自由に売却できるものではない点に注意してください。
交付するのは日本弁護士連合会
弁護士として活動するには、弁護士となる資格を得た上で、日弁連に備えられた弁護士名簿に登録される必要があります。
登録を希望する人は、入会しようとする地域の弁護士会を通じて日弁連に登録を請求し、審査を受けます。法律事務所への就職や所属が、そのまま弁護士登録になるわけではありません。
弁護士記章は、弁護士名簿への登録に伴い、所属弁護士会を通じて日弁連から交付されます。
そのため、「バッジを受け取ったから弁護士として活動できる」というよりも、必要な資格と登録を備えた弁護士に、記章が交付される仕組みです。
出典:日本弁護士連合会「弁護士の資格・登録」、「弁護士記章規則」第3条
弁護士バッジにはどのような情報がある?
弁護士記章規則の別表では、裏面に「日本弁護士連合会員章」の文字と、弁護士の登録番号を刻むことが定められています。
この登録番号は、日弁連の弁護士検索などで登録情報を確認する際にも使われます。ただし、番号が刻まれていることだけで、そのバッジを示している人物が本人だと判断することはできません。
記章を紛失した場合は、所属弁護士会を通じて、紛失の事情を記載した書面による届出と、再交付の申請を行う必要があります。
日弁連は紛失届を受けると、その旨を弁護士名簿に記載・記録し、官報に公告します。また、紛失により再交付する記章の裏面には、再交付の旨と回数が刻まれます。
公告や再交付にかかる費用は原則として本人負担ですが、災害による紛失などには免除の規定があります。必要書類や費用は所属弁護士会へ確認し、記章を適切に管理することが大切です。
出典:日本弁護士連合会「弁護士記章規則」第7条~第10条・別表
弁護士バッジの花はひまわり?意味はあるの?
弁護士バッジには、ひまわりの花と、その中心に秤が描かれています。弁護士記章規則では、十六弁のひまわり草の花の中心部に、秤を一台配する意匠が定められています。
ひまわりは「正義と自由」、秤は「公正と平等」を追い求めることを表しています。
弁護士法第1条では、弁護士の使命として、基本的人権の擁護と社会正義の実現が定められています。記章の意匠にも、法律家として大切にする価値が表現されているといえるでしょう。
花や秤は装飾だけでなく、弁護士という職業を象徴する図柄となっています。
参考:東京弁護士会「東京弁護士会Q&A・弁護士記章はどのようなデザインなのでしょうか?」、日本弁護士連合会「弁護士記章規則」別表、e-Gov法令検索「弁護士法」第1条
弁護士バッジはいつ使う?着用と携帯の違い
弁護士バッジを常に服に付けておくことと、職務を行う際に携帯することは別です。
日弁連の会則では、弁護士は職務を行う場合、記章を携帯することが原則とされています。ただし、日弁連が発行した身分証明書を携帯する場合は、記章の携帯に代えることができます。
したがって、バッジを襟元に付けていないことだけで、弁護士ではないと判断することはできません。
また、弁護士記章規則では、職務中に裁判所その他の関係人から求められたときは、携帯している記章の番号を示す必要があります。日弁連発行の身分証明書を携帯している場合は、そこに記載された登録番号を示す方法も認められています。
出典:日本弁護士連合会会則 第29条第2項、「弁護士記章規則」第4条
裁判所などでの身分・登録番号の確認
弁護士記章は、裁判所などで職務を行う際に、弁護士であることや登録番号を確認するために使われます。
ただし、裁判所への入庁方法や本人確認、所持品検査について、全国一律に「弁護士専用の入口から、バッジを見せれば無検査で入れる」と説明することはできません。
利用する入口や提示する物、検査の取扱いについては、各施設の案内と職員の指示に従う必要があります。
記章を持っていることが、どの施設にも自由に入れる権限や、検査を必ず免除される権利を意味するわけではありません。
また、記章の用途は裁判所への入庁に限られません。例えば、新宿区の戸籍に関する職務上請求の案内では、ホームページ等で氏名・事務所所在地を確認できる場合、弁護士記章の提示による確認を認めています。このように、取扱いには手続きや窓口ごとの条件があります。
参考:日本弁護士連合会「弁護士記章規則」第4条、新宿区「本人確認・権限確認書類について(職務上の請求をする場合)」
弁護士バッジの色で弁護士歴が分かる?素材には何が使われる?
弁護士記章には、銀製と金製があります。一般的な銀製の記章には金メッキが施されており、金色に見えるからといって、全体が金でできているわけではありません。
弁護士記章規則では、表面の花弁部分を金色、中心部の地色を銀色とすることが定められています。
銀製の記章は、使用によって金メッキが摩耗し、銀色の部分が目立つことがあります。しかし、色の違いが弁護士の経験年数や能力を示す等級になっているわけではありません。
また、銀の黒ずみは、空気中の硫黄を含む成分との反応によって硫化銀が生じることなどが原因です。使用・保管環境にも左右されるため、黒ずんでいることだけで、弁護士歴が長いと判断することもできません。
バッジの見た目と、弁護士としての経験が一致しない理由を見ていきましょう。
参考:東京弁護士会「東京弁護士会Q&A」、日本弁護士連合会「弁護士記章規則」別表、カナダ保存研究所「Understanding how silver objects tarnish」
紛失して再交付を受けた場合
長年弁護士として活動している人でも、記章を紛失し、新たな記章の交付を受けることがあります。
その場合、新しい記章を持っていても、弁護士としての経験が短いとは限りません。
記章の使用年数と、本人の弁護士歴は必ずしも一致しないため、見た目だけで新人かベテランかを区別することはできません。
金製のバッジを使用している場合
弁護士記章規則では、希望する弁護士の申出により、既に交付された記章と引き換えに、金製の弁護士記章を交付する仕組みが定められています。
金製記章の作成・交付費用は本人負担です。費用が改定される場合もあるため、申請時に所属弁護士会へ確認してください。
金製か銀製かという素材の違いもあるため、色だけを見て弁護士歴を推測することは適切ではありません。
出典:日本弁護士連合会「弁護士記章規則」第3条第3項・第4項
検察官・裁判官から弁護士に転身した場合
検察官や裁判官としての経験がある人が、必要な資格・登録の手続きを経て弁護士になる場合もあります。
弁護士記章は弁護士名簿への登録に伴って交付されるため、法曹として長く働いていても、新しい弁護士記章を持つことがあります。
一方、以前の職務経験があるからといって、全ての分野の弁護士業務に精通しているとは限りません。依頼を考える際は、記章の色や前職だけでなく、相談したい分野への対応を確認することが大切です。
参考:日本弁護士連合会「弁護士の資格・登録」、「弁護士記章規則」第3条
使用・保管の状態が異なる場合
記章の表面の状態は、どのように使用し、保管しているかによっても変わります。
服に付けて使う場合と、ケースなどで保管しながら携帯する場合では、表面が物に触れる機会も異なります。
そのため、長年使っていても見た目が新しく見えることがあり、摩耗や変色の程度から経験年数を正確に読み取ることはできません。
弁護士を選ぶときは弁護士バッジの色で選ぶべき?
弁護士を選ぶ際に、バッジの色を能力や対応の良さを判断する基準にする必要はありません。
確認したいのは、相談する内容に対応しているか、話を丁寧に聞いてくれるか、進め方や費用を分かりやすく説明してくれるかといった点です。
弁護士歴が長いことや若いことだけで、自分の依頼に合うかどうかが決まるわけではありません。相談したい分野の取扱い、連絡方法、依頼した場合の方針などを確認しましょう。
相談を予約する際には、相談料の有無、相談時間、無料相談の対象や条件も確認してください。バッジの色よりも、実際の説明や対応を通じて判断することが大切です。
参考:東京弁護士会「東京弁護士会Q&A・法律相談、弁護士費用について」
弁護士バッジのレプリカの購入は犯罪になる?
インターネット上で「弁護士バッジのレプリカ」と表示された商品を見かけた場合も、購入・所持することと、弁護士であると装って使用することは区別して考える必要があります。
また、販売されていることが、どのような使い方でも法律上問題がないことを意味するわけではありません。
ここでは、レプリカの取扱いに関する注意点と、弁護士を名乗る人物の登録情報を確認する方法を紹介します。
レプリカの購入と、身分を偽る使用は分けて考える
レプリカを購入・所持しただけで、直ちに弁護士法が禁止する「弁護士であるとの標示・記載」をしたことになるわけではありません。
一方、弁護士でない人が、レプリカを使って弁護士であると装う行為には、法令上の問題が生じる可能性があります。
弁護士法第74条には、弁護士や法律事務所であるとの虚偽の標示・記載を禁止する規定があります。例えば、名刺などに弁護士であると記載する行為が問題になります。
また、同条第3項は、弁護士法人でない者が、その名称中に「弁護士法人」またはこれに類似する名称を使用することを禁止しています。第74条に違反した場合の罰則は、第77条の2により100万円以下の罰金です。
これとは別に、資格がないのに法令で定められた記章や、それに似せて作った物を使用する行為は、使用状況によって軽犯罪法第1条第15号に該当する可能性があります。同法の罰則は拘留または科料です。
「冗談のつもりだった」「レプリカとして売られていた」という説明だけで、適法になるわけではありません。一方、購入・所持・着用などを全て同じ行為として扱い、必ず同じ犯罪が成立すると断定することもできません。
具体的な行為が法令に抵触するかは、その表示や使用状況に応じて判断されます。弁護士の身分を示す目的で、資格のない人が記章や類似品を使用しないことが大切です。
出典:e-Gov法令検索「弁護士法」第74条・第77条の2、「軽犯罪法」第1条第15号
バッジの色や刻印だけで本人確認をしない
バッジの色や刻印だけでは、目の前の人物が本当に弁護士であるかを確認できません。
「中心部分が銀色だから本物」「登録番号が刻まれているから安心」と判断せず、登録情報と本人の確認を分けて行うことが大切です。
実在する弁護士の氏名や登録情報が示されていても、その情報を別人が使っている可能性があります。本物の記章かどうかという問題と、それを示す人物が正当な所持者かどうかという問題も別です。
日弁連は、実在する弁護士の氏名・写真を使い、偽造した身分証明書の画像を示すなりすましについて注意喚起しています。SNS上で身分証明書の画像を見せられただけで、本人だと判断しないようにしましょう。
出典:日本弁護士連合会「実在する弁護士をかたる詐欺にご注意ください」
氏名・登録番号・所属弁護士会を確認する
弁護士を名乗る人物を確認する際は、氏名、登録番号、所属弁護士会を聞き、日弁連の「弁護士検索」で登録情報を照合しましょう。
日弁連の弁護士検索では、現在登録されている全ての弁護士の基本情報を確認できます。
これとは別の「弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ」は、取扱業務などから弁護士を探すための任意登録制のサービスです。ひまわりサーチに掲載されていないことだけで、弁護士ではないと判断してはいけません。
登録情報が一致していても、なりすましの可能性を排除できるわけではありません。不審な点がある場合は、日弁連の検索で確認した事務所の連絡先や所属弁護士会など、相手から渡された情報とは別に確認した連絡先へ問い合わせましょう。
その際は、「その弁護士本人から連絡が来ているのか」「その事務所で依頼を受けているのか」などを確認してください。相手が送ってきた電話番号やURLだけを使って確認を済ませないことが大切です。
また、企業内弁護士として働く場合も、日本の弁護士として活動するには弁護士名簿への登録が必要です。「企業内弁護士だから登録されていない」という説明を、そのまま受け入れる必要はありません。
詐欺が疑われる場合は、支払いや個人情報の提供を急がず、警察や消費生活センターなどへ相談してください。
参考:日本弁護士連合会「弁護士検索」、「弁護士の資格・登録」、「実在する弁護士をかたる詐欺にご注意ください」
弁護士バッジのモチーフや意味まとめ
弁護士バッジの正式名称は「弁護士記章」です。ひまわりは正義と自由、秤は公正と平等を表しています。
記章は、弁護士名簿への登録に伴って日弁連から貸与されるものであり、バッジを持つこと自体が弁護士の資格や権限を与えるわけではありません。
職務中は記章を携帯することが原則ですが、日弁連発行の身分証明書による代替も認められています。服にバッジを付けていないことだけで、弁護士ではないと判断することはできません。
また、記章の素材や再交付の有無、使用・保管の状態によって見た目は変わるため、色だけで弁護士歴や能力を判断しないことが大切です。
弁護士を名乗る人物に不審な点がある場合は、バッジや身分証明書の画像だけを信用せず、氏名・登録番号・所属弁護士会を確認しましょう。必要に応じて、独立して確認した事務所や弁護士会の連絡先へ問い合わせてください。













