臨床心理士は数あるメンタルケア系資格のなかでも知名度と信頼性が高い資格ですが、ネットで調べてみると「仕事がない」といったネガティブな検索キーワードを見かけることがあります。
臨床心理士資格の取得を目指す方のなかには「本当に資格を取る価値があるのか…」と不安に感じる方も少なくないと思います。
そこで今回は臨床心理士は仕事がないと言われる理由や現状と今後の需要、仕事内容の大変さについて解説していきます。
また、あわせて臨床心理士の仕事を得るためのおすすめの方法をご紹介します。
臨床心理士は仕事がない?
人のこころに寄り添い、問題解決やストレス解消の糸口を共に探る臨床心理士は、資格を取得しなければ就くことができない職業です。
資格を取得した人しかなれない職業という事はさぞ、求められている仕事であり、職場も選び放題だろうと考えてしまいますが実際は就職先が少なく「仕事がない」と言われています。
せっかく資格を取得したのにそれを活かす職場が少ないのは残念な事です。
仕事がないというよりは、職場がない
この後詳しくご紹介いたしますが、臨床心理士は現代のストレス社会では無くてはならない存在ですし、需要自体はかなり高い職業です。
また、一人が行う仕事量が多く、仕事自体も簡単ではありません。
しかしながら、現状臨床心理士が活躍できる場は未だ少なく、新たに人員が募集される事が非常に少ないです。
需要が高いのに対し、求人が少なく新な臨床心理士の働き場がないことから、「臨床心理士の資格を取っても仕事がない」「意味がない」と言われてしまっているのです。
この後は、もう少し詳しく仕事がないと言われる理由と、臨床心理士の現状と今後の需要についてご紹介していきます。
臨床心理士は仕事がないと言われる理由
現代の競争社会では心に不安を抱える社会人や学生が多く、メンタルヘルスへの関心が高まってる一方で、臨床心理士には仕事がないと言われています。
先ほどご紹介したように、臨床心理士に仕事がないと言われる主な理由は求人状況の少なさが原因です。
求人状況の少なさに加えて、臨床心理士に仕事がないといわれる理由を大きく3つご紹介します。
- 入れ替わりが少ない
- 供給過多になっている
- 待遇が良い仕事が少ない
仕事がないと言われる理由①入れ替わりが少ない
臨床心理士の主な就職先は、医療施設・学校・企業・福祉施設などです。
このような就職先では、1人の臨床心理士が長年に渡って勤務することが多いため、頻繁な人員補充や入れ替えは行われていません。
そのため求人も少なく就職先が見つかりづらいので、仕事の需要自体はあるにもかかわらず「仕事がない」という結果になっているのです。
また臨床心理士として働いている人の約半数は非常勤であるため、正社員として働きたい人にとってはより仕事がない・少なく感じると思われます。
以下の記事で臨床心理士の就職先や就職率について詳しく解説いますので、ぜひこちらもご覧ください。
仕事がないと言われる理由②供給過多になっている
臨床心理士の試験は、令和に入ってから毎年1,000人~1,400人程度の合格者を出しており、年々資格保有者が増加しています。
しかし、先ほども述べたように求人枠が少ない現状では、少ないポストを多くの人数で取り合う事になるなど、臨床心理士は供給過多の状態になっているのです。
臨床心理士の活躍の場は既にいる臨床心理士で足りてしまうため、これ以上職場の数自体が増えないと今後も仕事がないと言われ続けることでしょう。
仕事がないと言われる理由③待遇が良い仕事が少ない
臨床心理士の就職先の中には行政が運営している施設も多く、児童相談所や市役所、女性相談所などからの求人はありますが、その大半は給与が安く、生活するには苦しいお給料なのが現状です。
給料が安い理由として、前述した公的施設の予算が少なく、人件費にまでお金が回らないことがあげられます。
このような現状から、臨床心理士は正社員や待遇が良い仕事がないと言われることがあります。
臨床心理士の年収については以下の記事で詳しく解説しておりますので、こちらも併せてご覧ください。
臨床心理士の今後の需要と将来性は?
ここまで、臨床心理士には需要はあるけど仕事がないとご紹介してきましたが、本当に需要があるのか、将来性はあるのか心配になってきますよね。
ですが、臨床心理士の需要はありますし、今後も需要は増えていくと考えられます。
ここからは臨床心理士に需要がある・将来性があると言える理由を以下の2つ解説します。
- 心のケアが必要な人が増加している
- AIに取られる仕事ではない
①心のケアが必要な人が増加している
厚生労働省のデータによると精神疾患を有する患者数は2002年では約258万人ですが、2017年には約419万人とおよそ1.6倍となっており、その数は年々増加しています。
心のケアを必要とする人が多くなるほど、臨床心理士の需要も高まるといえるでしょう。
また、不登校やハラスメントなどの相談件数が増えるに従って、臨床心理士によるカウンセリングも需要が高まっています。
いきなりの正社員雇用は難しいかもしれませんが、今後学校や企業内でも臨床心理士の活躍の場は徐々に増えていくでしょう。
②AIに取って代わられる仕事ではない
近年、AIによる仕事の代替により仕事の需要がなくなる職業がでてくるといわれています。
その点、臨床心理士はAIに仕事をとられる心配をする必要はありません。
臨床心理士の仕事では、心の問題を抱えるクライエントの性格や考え方を知り、サポートするため試行錯誤していく必要があります。
現状、AIがこのように複雑な臨床心理士の仕事を行うことは難しく、臨床心理士の需要はAIによる代替で減ることはないでしょう。
臨床心理士の将来性については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらの記事も併せてご覧ください。
臨床心理士の仕事内容は大変すぎる
勤務先の大きさにもよりますが臨床心理士は基本的に職場に一名の配属となりますので、一人で抱える仕事量が非常に多く大変であるとも言われています。
また、同じ仕事の話をできる相手がおらず孤独に感じることもあるでしょう。
臨床心理士は一人で複数のクライエントの心の問題を解決するサポートを行うため、仕事内容は予想以上に大変なことが多いです。
また、実際に就職した場合、臨床心理士試験には実技試験の項目がないため、働いたときにギャップを感じることでしょう。
こちらでは臨床心理士の仕事内容の大変さについて詳しく解説していきます。
- 先輩がいないこともあり得る
- カウンセリング業務が非常に難しい
- クライエントに合った療法を見つけるのが大変
- 地域レベルで大勢の人にカウンセリングすることもある
- 資格取得後も調査・研究を続けていく必要がある
大変である理由①先輩がいないこともあり得る
臨床心理士は、現状重要性を軽視されていることから多くの職場で1名のみ採用されています。
資格取得後に無事、職場に就けたとしても先輩はおらず、自分で一からクライエントの対応や処理をしなければならない可能性もあり得ます。
もちろん、カウンセリングだけが臨床心理士の仕事ではないため、一人で抱える仕事量が多くかなり大変だという声も挙げられています。
万が一カウンセリングやその他の業務で相談したいことがあってもできない可能性があるのは非常に厄介です。
資格取得後の就職先はできれば、数名の臨床心理士が在籍している場を探し、しっかりと経験を身に着けることに注力したほうが良いかもしれません。
大変である理由②カウンセリング業務が非常に難しい
臨床心理士の仕事の中でもカウンセリングは主要な仕事で、クライエントの話を一対一で聞きその人の性格や悩みを知った上で、援助の方向性を決めます。
ただ一方通行で話を聞くだけではなく、クライエント本人でさえ気づいていない問題に気づいて洗い出したり、どのような表現をしたら傷つかないかなどを考えながら話したりしなければなりません。
またクライエントの中には、精神的・肉体的に虐待を受けたことがあったりトラウマを抱える方もいるので、憂鬱とした話を長時間にわたって傾聴する時もあります。
クライエントの精神状態によっては、激しい言葉をぶつけたり暴れたりする可能性もあることから、臨床心理士は強靭なメンタルを持っていないと勤まらないです。
このようにメインであるカウンセリング業務が非常に難しい点が、臨床心理士の仕事は大変だと言われる大きな理由の一つです。
大変である理由③クライエントに合った療法を選ぶのが大変
臨床心理士はクライエントの特徴や精神状態に応じ、様々な心理療法を用いてクライエントの心を支援します。
「こんな人にはこの療法が向いている」という確固たる規定やマニュアルは存在せず、カウンセリングを通してクライエントに適した療法を選ばなければなりません。
時には複数の療法を組み合わせて実践したり、今まで続けてきた療法を勇気をもって中断・変更したりする必要もでてきます。
このように複数ある療法の選択肢の中からクライエントに合う療法を探すことが大変です。
大変である理由④地域レベルで大勢の人にカウンセリングすることもある
臨床心理士の職場は、病院やクリニックの他に、小学校や保健センター等多岐にわたります。
非常勤で働いている場合、いろいろな職場に籍を置いている場合も少なくありません。
小・中学校に通う学生と保健所・保健センターに相談に来る患者やその家族とでは、心配事の内容や悩んでいる期間などが異なるため、アプローチの方法も異なることでしょう。
そんな年齢・性別・環境の異なる地域レベルで多くの人を相手にカウンセリングすることもあるため、仕事が忙しくて大変だという臨床心理士もいます。
世間からの需要があるのに、カウンセリングを行っている場が少ないことが原因で起きている悪循環であるといえるのではないでしょうか。
大変である理由⑤資格取得後も調査・研究を続けていく必要がある
臨床心理士に限らずどの資格にも当てはまることですが、資格取得後も常に新しい知識を得るために勉強する必要があります。
資格を取ったときの古い知識のままでは、新しく出てきた心の問題に対する考え方や心理療法などに対応できないので、臨床に携わりながら調査・研究を続けていかなければなりません。
臨床心理士には5年ごとに更新があり、研修会などへの参加が義務付けられているため、心理学を勉強し続ける必要があります。
仕事が多く、大変なのに加えて、研究会への参加等時間が取られることが多く発生するのは臨床心理士の大変なことです。
臨床心理士の仕事を得るにはどうする?
需要はあるのに仕事がないと言われる臨床心理士、仕事内容も大変と感じる部分が多い職業ですが、それでも目指したい!という方はどのように職場を見つければ良いのでしょうか?
新卒組、転職組が入り混じる心理カウンセリング業界の就活では、給料の良い仕事はベテランのカウンセラーがライバルになり、若手は苦戦するでしょう。
そんな中で、臨床心理士として希望の仕事に就くにどうすればいいのか、こちらで詳しく解説していきます。
給料の低い非常勤の求人に応募してみる
結論から先にお伝えすると、まずは給料の低い非常勤の仕事から始めることをおすすめします。
心理カウンセリング業界では条件の良い常勤職が人気ですが、非常勤の仕事を2個、3個と掛け持ちして働くカウンセラーも多く、好きな組み合わせや自分のスタイルに合った職場をそれぞれ選んでいます。
非常勤の契約は基本的に一年契約のため、契約が切れたタイミングでより自分の希望に合った職場に転職しようとするカウンセラーが多いため、非常勤の求人は常勤職よりも多く出ています。
当然、条件の良い求人にはベテランの臨床心理士が応募する傾向にあるので、若手は不利になりますが、給料の低い求人だとチャンスがあります。
まずは経験を積んで徐々に高収入の職場を狙っていきましょう。
経験値を積んでキャリアアップを目指す
はじめのうちは多少給料が低くてもその職場で経験を積み、キャリアアップに向けて勉強を続ければ2~3年の内に条件の良い仕事を目指せるでしょう。
将来性にカウンセラーとして独立開業を目指されている方も、自分に依頼してくれるクライエント(相談者・依頼者)が増えていけば十分現実的になります。
学校などの教育機関の教育相談員、いわゆるスクールカウンセラーとして働くことができれば、非常勤でも時給2,000円~5,000円とかなり安定した給料を得られます。
スクールカウンセラーなどの条件の良い仕事は求人倍率が非常に高いですが、経験を積みながら専門知識を深めることができれば仕事の選択肢はかなり広がるでしょう。
臨床心理士として活躍するためのポイント
臨床心理士の需要が今後も伸びていくからといって、資格を取得すれば安泰というわけではありません。
冒頭の「臨床心理士は仕事がない?」の章で触れたとおり、臨床心理士を取り巻く現状が厳しいのも事実です。
以下ではそのような現状の中で、臨床心理士として活躍するために大切なポイントを以下の3つ解説します。
- 話を聞く力を磨く
- 常に新しい知識を手に入れる
- 適度にリフレッシュする
活躍するためのポイント①話を聞く力を磨く
臨床心理士はクライエントの話を聞くことが主な仕事内容ですから、人の話をよく聞き、相手の目線に立って考えるという力を磨くことで、より良いカウンセリングを行うことができます。
クライエントの中にはあまり人には話したくない・誰にも言ったことがない悩みや不安を抱えている人が多くいるので、上手に引き出してクライエントの思いを受け止めることで快方に向かえます。
クライエントの悩みを上手に聞き出せるように、聞く力を磨き上げていきましょう。
活躍するためのポイント②常に新しい知識を手に入れる
現代社会は経済的にも技術的にも大きく発展したことにより、人々の生活が目まぐるしく変わり、昔の常識が通用しなくなったケースが多々あります。
これは臨床心理士にも同じことで、常に新しい技術や知識を習得しておかないと今使っている技術が使えなくなるケースも出てくるでしょう。
積極的にセミナーや研修会に参加して知識をブラッシュアップしていくことが大切です。
常に新しい知識を仕入れていくことで、クライエントにより適切なアドバイスを伝えられたり、新しい療法をアプローチして悩みを解決できたりするはずです。
活躍するためのポイント③適度にリフレッシュする
人の心の暗い部分に触れなければならない臨床心理士は、クライエントに共感することで心が疲れたり、神経をすり減らしたりしやすい仕事と言えます。
クライエントの気持ちに寄り添うことは大切ですが、自分まで疲弊してしまうと臨床心理士の仕事が勤まらなくなってしまいます。
常に仕事のことで頭をいっぱいにするのではなく、適度にリフレッシュを挟んで気持ちを切り替えることで頭がスッキリして、気持ちを新たにしてクライエントと向き合うことができるでしょう。
臨床心理士は仕事がない?|まとめ
- 入れ替わりが少なく勤務先が見つかりにくいため仕事がないと言われている
- 精神疾患の患者数が増加傾向にあるため今後の需要は増える
- 仕事を得るには非常勤で経験を積むのがおすすめ
- カウンセリングが難しいなど仕事内容が大変
- 傾聴力を磨く・知識を更新するなど日々の努力が必要
臨床心理士の仕事は入れ替わりが少なく供給過多の状態になっているため、新規参入する場合は仕事に就くのに苦戦するでしょう。
しかし、非常勤の仕事であれば常勤職よりも求人数が多いので、資格を取りたての方でもチャンスはあります。
はじめのうちは臨床心理士としての経験を積みつつ心理学の勉強を続ければ、2~3年程度で希望の条件の仕事を目指せるようになるでしょう。
心に悩みを抱える人は年々増加しているため、臨床心理士の需要は今後も増えると言えます。
仕事内容に大変な部分はもちろんありますが、自分が関わることによって心に悩みを抱えた方が元気な姿になるのを見ると、とてもやりがいを感じられるはずです。
ぜひ臨床心理士資格の取得を目指されてみてください!
臨床心理士資格の取得をご検討中の方は、以下の記事もぜひご覧ください。