
税理士と社労士の「ダブルライセンス」はビジネスにどう活かせるのでしょうか。本ページでは税理士と社労士の業務内容の違いや、仕事におけるダブルライセンスのメリットを徹底的に解説します。
二つの資格を組み合わせて有することで強みを発揮する「ダブルライセンス」。
税理士と社労士はそれぞれ独占業務を有する難関資格ですが、この組み合わせによるダブルライセンスには、仕事におけるメリットが多いと言われています。
互いに国家資格が必要であり、密接に関わることもある税理士と社労士の仕事。
今回は両者の業務内容について詳しく見ていき、ダブルライセンスの実現可能性やメリット・デメリットについて解説します。
目次
税理士と社労士の違いって?

税理士と社労士は、両方とも私たちが生きる社会、そして勤める会社に深く関わる専門職です。
それぞれがどのような仕事内容で、どのような違いがあるのでしょうか。
詳しく見てみましょう。
税理士の仕事内容と受験資格
税理士は「税に関するプロフェッショナル」といえます。
企業もしくは個人においての税務代理業務や報告書の作成をするほか、税金に関する相談に乗ったり、アドバイスをしたりします。
税理士の資格を得るためのルートはいくつかありますが、税理士試験を受けるのが一般的です。
税理士試験の合格率は10%から15%前後となり、決して高くはありません。そのため国家試験の中でも難関と言われます。
税理士試験の受験資格は、法律学又は経済学を履修した方、日商簿記検定1級合格者など細かい規定がありますのでチェックしておきましょう。
社労士の仕事内容と受験資格
社労士は「社会保険労務士」の略称です。
労働基準法や労災保険法、雇用保険法、健康保険法など、厚生労働省が所轄する法律についての専門家です。
企業からの労務管理に関する依頼や相談に対応したり、個人からの労働に関する相談に乗ったりすることができます。
昨今導入された「働き方改革」へ企業が対応していくなかで、社労士の需要は増していくことが予想されます。
社労士になるためには、税理士と同じく国家試験に合格する必要がありますが、平均合格率が5%前後と大変低くなっています。
受験資格は一定以上の学歴や実務経験、行政書士の資格を持つ方などとなります。詳しくは公式Webページで確認しましょう。
ダブルライセンスのメリットとは
税理士の仕事は多岐に渡りますが、近年、計算業務などはPCやAIでまかなえるようになって来ています。
そのような事情もあり、注目されているのが二つの資格を所有する「ダブルライセンス」です。
税理士と社労士の二つの資格を持つことで他の税理士・社労士事務所との差別化になるため、より多くのクライアントの獲得が期待できます。
しかし実際にダブルライセンスは可能なのでしょうか。取得することによるメリット・デメリットと併せて、詳しく見てみましょう。
そもそもダブルライセンスは可能?
税理士、社労士ともに国家資格であり、難易度は非常に高めです。
それぞれ試験内容は異なるため、各試験に向けてしっかり対策する必要があります。
二つの試験の相違点として、まず税理士試験は記述式ですが社会保険労務士試験はマークシート方式という点があります。
なおかつ、税理士試験は数年に跨いで少しずつ合格すればよいのですが、社会保険労務士試験は8科目まとめて合格しなければなりません。
一つ取得するのでさえ困難な資格ですが、ダブルライセンスが不可能かと言うと、そんなことはありません。
実際に両方の資格を取り活躍されている方もいらっしゃいます。しかし二つとも難関試験ということもあり、人数的には少ないのが現状です。
ダブルライセンスを取得するメリットとは
苦労してダブルライセンスを取得することのメリットはどれほどあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
まずご説明しておきたいのは、税理士と社労士には、それぞれ独占業務というものが定められているということです。
有償でその業務を行えるのは有資格者のみとされているため、ダブルライセンスを取得すればそれだけ行える業務の幅が大きく広がります。
クライアントが企業の場合、税理関係や労務関係、社会保険などの相談をまとめてされることが多くなります。
クライアント側からすると「毎月の給与計算は社労士に依頼して、決算や確定申告は税理士に依頼して…」と、いちいち区別するのは面倒なもの。
実際、税理士が労務関係の相談を受けることは珍しくなく、もし自分が税理士の資格しか持っていない場合は知り合いの労務士を紹介するケースが多くなります。
両方の資格を持っておけばスムーズに相談の受け答えができますし、クライアントも別の人に相談するコストが削減できます。
ダブルライセンス専門の事務所も
また、ダブルライセンスは自分自身がどこかの事務所へ所属する際に絶好のアピールポイントになります。
事務所としても幅広い業務を任せられる人材を求めていますし、両方の業務を請け負うダブルライセンス専門の事務所も存在しています。
税理士も社労士も社会人となってからの資格取得は可能なので、「もっと自分の業務の幅を広げたい」「ダブルライセンス専門の事務所へ転職したい」と感じてからダブルライセンス取得を目指すのも良いでしょう。
ダブルライセンスのデメリットはあるのか

ダブルライセンスを取得することのメリットを挙げてきましたが、ではデメリットはあるのでしょうか?
もちろん、資格取得で不利益が生じることはありません。しかし、ダブルライセンス特有の注意点があります。
それは、税理士と社労士両方の仕事を受け持つことで、それぞれの専門性が中途半端になってしまうことです。
税理士も社会保険労務士も、社会情勢に詳しくなければいけませんし、変わりゆく法律などにも対応していかねばなりません。
二足のわらじをはくことによりそれぞれの勉強時間が減ると、両者の専門性に欠けてしまう恐れがあるのです。
しかしこれは、税理士と社労士のダブルライセンスに限った話ではありません。専門性はどの職業にも求められますから、そこはある程度割り切りが必要となるでしょう。
税理士・社労士のダブルライセンスのまとめ
今回は、税理士・社労士それぞれの仕事内容、ダブルライセンスのメリット・デメリットについてまとめました。
難関資格を二つ取得することは険しい道ですが、苦労に見合ったメリットを得られることがおわかりいただけたかと思います。
専門性を極めるだけでなく、業務の幅を大きく広げたい方は、ダブルライセンスを目指してみると良いでしょう。